第一章の3から5の草稿をアップします。
記事として清書出来れば、草稿は削除します。
■基礎問題Q3
3.キャッシュフロー計算書(CF)で、優良安定企業の典型的なパターンを挙げよ。
キャッシュフロー計算書で優良安定企業の典型的なパターンは、営業活動によるキャッシュフローがプラス、投資活動によるキャッシュフローがプラス、財務活動によるキャッシュフローがマイナスです。
もちろん例外もありますが、優良安定企業はこの典型的パターンを長期的には示します。
ではなぜそのようなパターンがあるのかを見ていきましょう。
キャッシュフロー計算書は企業の現金の流れを表しています。損益計算書では売掛が発生したり、売上高に対応する仕入在庫のみが売上原価として費用計上される仕組みであるため、実際の現金および現金同等物の流入・流出が見えません。この流入・流出を見るためにキャッシュフロー計算書はあります。
あえて単純化すると下記の判別方法があります。
営業キャッシュフローがプラス=本業の営業活動でキャッシュを稼げている。
営業キャッシュフローがマイナス=本業の営業活動でキャッシュが稼げていない。
投資キャッシュフローがプラス=本業以外の投資活動でキャッシュを稼いでいる。
投資キャッシュフローがマイナス=将来の本業の営業活動のために先行して投資している。
財務キャッシュフローがプラス=外部からの資金調達を行っている。
財務キャッシュフローがマイナス=借金を返済したり、配当を支払っている。
優良安定企業の典型的なパターンは
営業キャッシュフローがプラス=本業の営業活動でキャッシュを稼げている。
投資キャッシュフローがプラス=本業以外の投資活動でキャッシュを稼いでいる。
財務キャッシュフローがマイナス=借金を返済したり、配当を支払っている。
ということで、投資をあまりせずとも安定して本業が儲かっており、順調に借金を返済しているということなのです。なお、投資キャッシュフローがマイナスであっても、業界の競争環境によってはどんどんと投資をしていかないと取り残される業界もあるため、一概に判別は出来ない部分もあります。
成長企業は投資にまだ力を入れている様子がキャッシュフロー計算書から見えます。
また苦しい企業は本業が儲からず自転車操業に陥っているのが見えてきます。
さて次回は「儲かるプラン」とは何かを考えてみましょう。
■基礎問題Q4
4.お客様に「儲かるプラン」を提案するとき、儲かるとは何を指しているか。それはなぜか。
僕は営業マンなのでお客様に「儲かるプラン」を提案します。しかし、この時の「儲かる」は数年前まで非常に曖昧なものでした。また、お客様がBtoC、BtoB、BtoGいずれの形態かで変わってきます。
まずBtoBに限定して考えてみます。「儲かるプラン」とは多くの場合、短期的に営業利益を向上させることを指していると僕は考えます。より踏み込んだ提案であれば損益計算書ではなく、貸借対照表に深く関わる提案もあり得ますがよりハードルは高いものになります。
BtoCでも類似していますが、節約出来たり、投資によりリターンが期待出来たりといった金銭的なものだけでなく、時間の節約やより広義の「お得感」の訴求もあり得ます。
BtoGは法や慣習などの意思決定者の外部要因が大きいので別途考慮が必要だと思います。
BtoBであっても営業の実際はお客様の状況や要望、潜在的なニーズによって提案は変わってくるでしょう。しかし、会計で考えるともう少し単純化出来ると僕は考えます。
例えば、顧客に車で配送をする企業(ネットスーパーなどが想像しやすいかもしれません)に対して「配車計画システム」を提案する場合は、車や運転手などの有限の資産の回転率を高めることで人件費やガソリンを節約しつつ顧客満足度も向上し、営業利益と営業キャッシュフローを向上させます。
別の例では、エリアマーケティングシステムで店舗の統廃合を行うことで固定資産を現金化し、経常利益を増加させます。また現金を効率的な店舗や事業に再配分することで回転率を高め、1店あたりの売上増加、人件費の削減などで営業利益と営業キャッシュフローを向上させます。
もっと別の図式はないか考えました。営業利益方程式というものがあります。これは営業利益を左右する要素をツリー状に分解したものです。これらの1つまたは複数要素を改善するというのも「儲かるプラン」と言えそうです。
また「見えざる資産」や「人」と財務諸表の外に書いたものも会計にもっと詳しい人であれば総資産の内訳として「無形資産」(のれんなど)に組み込むほうが正確かもしれませんね。
さて次回は労働生産性について考えてみましょう。
■基礎問題Q5
5.労働生産性について、営業利益ベースのものと、付加価値ベースのものの違いは何か。また時間あたりの労働生産性(営業利益ベース)を指標として重視する場合、行うべき残業のパターンを挙げよ。
まず付加価値と営業利益の違いを考えます。
付加価値は営業利益と人件費と減価償却費を足してものと言えます。正確には付加価値の算出方法はいくつかありますが、ここではざっくりと考えます。
また「付加価値」という言葉は会計の定義以外にも「本来の機能とは違った、追加の機能による価値がある」状態を指すこともあります。むしろこの意味で使われることのほうが多いような気もしますが、今回は会計なので一旦は、置いておきます。
営業利益は売上総利益から販売費および一般管理費を引いたものです。営業利益には人件費は含みません。
人件費を含む付加価値と、人件費を含まない営業利益どのような使い方になるでしょうか。
例えばGDPは「国内で新たに生産されたモノやサービスの付加価値の総額」であるため、GDPを増やすという目的に対しては、人件費を削減するという手段は控えるべきかもしれません。少なくとも人件費を削減した分、削減に貢献した機械やサービスに対して対価を払わないとGDPは下がっていきます。個々の企業で見た時は人件費の削減は営業利益を向上させることもありますが、GDPや景気の面など国レベルのよりマクロな状況ではマイナス面を持ちます。
では「労働生産性」に進みましょう。「労働生産性」は多くの場合、付加価値を従業員数で割ったものを指します。問題文には「時間あたりの労働生産性(営業利益ベース)」とありますので、営業利益を従業員全員の投入時間数で割ったものを指します。時間あたりの利益を考える方法として、スループット・ダラー・デイズなどもありますが第三章で紹介出来ればと思います。
時間あたりの労働生産性(営業利益ベース)で見ると行うべき残業は限られます。
営業利益が増加する(短期/長期)
今後の投入時間が減少する(仕組み作り)
クレーム等から売上減少を食い止める
これを見ると日本の長時間労働やブラック企業問題、ブラックバイト問題はどのような問題点を内包しており、どこから解きほぐすべきか糸口が見えた気がするのは僕だけでしょうか。
ただし、あくまで1つの指標で見た場合であって、絶対的な正しさがあるわけではありません。
さて、次回はコラムを挟んで応用選択問題に入っていきましょう。応用の1つめは無借金経営を考えてみましょう。