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2016年7月20日水曜日

第一章「会計と経営分析」No.2 「BSの3つの構成要素」

基礎問題Q2
貸借対照表(BS)の3つの大きな構成要素を挙げよ。

 第一章の初回に会計について問題文を出しました。今回も基礎問題から回答していきます。 

BSの構成要素「負債」、「純資産」、「総資産」

貸借対照表の3つの大きな構成要素は「負債」、「純資産」、「総資産」です。

それぞれをごく簡潔に説明します。

  • 負債は銀行等から借りたお金で、返済する義務があります。

  • 純資産は株主から集めたお金等で、返済の義務がありません。

  • 総資産は将来的に収益をもたらす価値のあるもので、負債と純資産を合計した額と等しくなります。

財務諸表の関係

 前回に損益計算書について、今回は貸借対照表について説明しています。それぞれの関係を図で見てみましょう。
 元となる図は小難しい会計の知識なんて不要! 経営分析の超入門講座 (金子 智朗)を参考に改変しました。 
 この図で分かることは損益計算書(PL)は前年と今年の2つの貸借対照表(BS)に挟まれています。このため財務分析でPLとBSの両方を使うときはBSは二期の平均の値を使います(が、急いでいるときは単年度のBSでも、参考値ぐらいは出ます)。
 また、総資産に記載できそうで出来ない要素として「見えざる資産」と「人」という概念があります。
 さて次回はキャッシュフロー計算書で見える優良安定企業のパターンを考えてみましょう。

【コラム】「機能の経営戦略論」と「機能−構造主義の社会システム論」

 神戸大学の三品和広教授は、著書『戦略不全の論理』(2004年)で過去の経営戦略論に名前をつけて整理している。例えばアンゾフ(1965)の市場マトリックスの手法などに関する主張を「計画の戦略論」、ポーター(1980)の5フォース分析や産業構造論を「構造の戦略論」としている。三品先生は『戦略不全の論理』で展開している自身の戦略論に名前をつけて整理していないが、僕は同じ命名規則をとって「機能の戦略論」と命名したい。また、三品先生が『モノ造りでもインターネットでも勝てない日本が、再び世界を驚かせる方法 センサーネット構想』(2016)などで展開している戦略論にも、僕は同じ命名規則をとって「次元の戦略論」と命名したい。


 「機能の戦略論」とは何か。三品先生の着想の優れた点の1つであるが、戦略を実際に存在するかどうか特定できないものとし、「戦略が機能しないのはなぜなのか、機能しない戦略とは何なのか、それを問う」(三品、『戦略不全の論理』2004年、はしがきより)。この「機能」が指し示すものに、社会学をやっていた僕には既視感がある。この「機能」は、ニクラス・ルーマンが展開している「機能-構造主義」の社会システム論における「機能」と相似形である。ルーマンの社会システム論の特徴を明かし、さらに「機能の戦略論」との相似形を示すほどに両者を抽象化して並べるには若干の紙幅が必要なので、ここでは類似性を示唆するに留めたい。
 自説の展開は第二章以後で。

2016年7月17日日曜日

第一章「会計と経営分析」No.1 「5つの利益」

基礎問題Q1
企業会計の損益計算書(PL)において、5つある利益を上から順に挙げよ。
ヒント:日本オラクル等の輸入ソフト会社の損益計算書などを参考にしても良い。(筆者は輸入ソフトの会社に勤務しています)


 第一章の初回に会計について問題文を出しました。今回は基礎問題から回答していきます。

損益計算書の大まかな構造
 まず、損益計算書の大まかな構造を見てみましょう。

 

損益計算書の5つの利益
 売上総利益(粗利)、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益の5つです。

 それぞれ基礎的な概念から足し算、引き算で求められるものです。


  • 売上総利益(粗利)
  • 売上総利益=売上-原価


  • 営業利益
  • 営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費


  • 経常利益
  • 経常利益=営業利益+営業外利益-営業外費用

  • 税引前当期純利益
  • 税引前当期純利益=経常利益+特別収益-特別損失

  • 当期純利益
  • 当期純利益=税引前当期純利益-法人税等


 上記の5つ以外の利益も挙げることは出来ますが、あまり一般的ではありませんし、損益計算書に表立って出てきません。例えば、限界利益など。

 また、考え方によっては「売上」を「利益」の1つと考えることも不可能ではありません。ときにはなぜあなたはそのように思ったのかを議論することは重要ですが、今回の回答としては上に挙げた5つが僕の答えです。「売上」(「収入」または「収益」)から「費用」を引いたものが「利益」と定義できます。どこまでを「費用」とみなすかでこれらの5つの「利益」が現れるということができると思います。
 さて次回は貸借対照表の3つの大きな構成要素を考えてみましょう。

2016年7月9日土曜日

第一章「会計と経営分析」No.0 「会計を学ぶ意義」

基礎問題No.0
あなたが会計について学ぶことの意義について、簡潔にあなたの意見を述べよ。

 前回は会計について問題文を出しました。今回は基礎問題から回答していきます。
   会計を学ぶ意義は2つに分解できます。1つは「人間が基礎的な学習をし続ける意義」です。もう1つは「ビジネスマンが会計を学ぶ意義」です。


「人間が基礎的な学習をし続ける意義」
 人間が基礎的な学習をし続ける意義は古くはギリシア哲学の時代から考えられてきました。有名な話ですが、一般的な教養は「人を自由にする技術」と考えられ、「リベラル・アーツ」と呼ばれます。僕の時代では大学に入学し、一般教養の授業を受けるときにはこの話があったと思いますが、今はどうでしょうか。
 裏を返せば(厳密に「裏」なのか、「逆」なのか、「対偶な」のかは僕もよく考えてみます)、人間は一般的な教養を身につけない限り自由にはなれない、奴隷のまま、家畜と同じなのだと僕は考えます。
 ギリシアの哲学者ソクラテスはこう言ったそうです。「無知は罪なり、知は空虚なり、英知持つもの英雄なり」と。現代風に意訳すると、「無知な状態のままでいることは犯罪的だ。しかし、知識ばかりの頭でっかちの奴になるな。知識だけにとどまらず実践し、知恵をつけて社会の役に立ちなさい」。さらに僕は営業マンなので会社の同僚との勉強会でこう意訳しました。「会計・数字の知識がない営業マンはアカン。でも、知識だけではアカン。営業マンたるもの受注して会社の実績に貢献せよ」と。

「激動の時代に人は輝く」
 古代ギリシアではなく、現代の日本だとどうでしょうか。政治学者の小室直樹先生は「激動の時代に人は輝く」と考えていました。僕は小室先生には、直接お会いしたことはありませんが、小室先生の弟子である宮台真司先生の講義を受けたことがあります。宮台先生が日本の将来を心配すると、小室先生は「激動の時代に人は輝く。心配ない」とおっしゃったといいます。どういう意味でしょうか。普段は社会の仕組みや制度の寿命は、人の寿命を遥かに超えているため、人は社会の仕組みや制度に縛られています。しかし、社会の仕組みや制度が古くなり寿命を迎えると、可塑的で柔軟な存在である人が輝きを持ち社会の仕組みや制度を変えていくのです。
 僕がこの話を講義で宮台先生からお聴きしたとき、小室先生はまだご存命でした。20109月、僕は政治学の塾「咢堂塾」に通っており宮台先生の特別講義を楽しみにしていました。この講義には遠くは沖縄や九州から東京の永田町に通っていた同期もいました。しかし、この日に小室先生がお亡くなりになり、宮台先生は通夜の準備を取り仕切り、講義は中止となってしまいました。
 小室先生のお考えに、前提があると僕は考えています。人は可塑的で柔軟であるけれども知識は必須で、しかも実践し知恵を持っている人でないといざというときに輝いて社会に役立つことはできない、と。
 僕が子どもにこうやってテキストを書いてまで、僕が死んだとしても教えることができる体制作りにこだわるのはこのような背景があるからです。

「ビジネスマンが会計を学ぶ意義」
 もう1つのビジネスマンが会計を学ぶ意義も考えてみます。僕はこう考えます。「会計はビジネスの共有言語である」、「会計は起こったことを正しく記録し、説明する」と。教科書的には会計は以下の3つに区分できます。「財務会計」、「管理会計」、「税務会計」です。

「財務会計」、「管理会計」、「税務会計」
 「財務会計」は株主、投資家、取引先などに正しく伝えるためにあるものです。
 「管理会計」は経営者、管理者、現場が正しく判断するためにあるものです。
 「税務会計」は納税と節税を正しく行うためにあるものです。
 僕は税務会計を教える力量はありませんので、財務会計と管理会計のごく一部を今後、書いていきます。

複式簿記は大航海時代に生まれた
 有名な話ですが複式簿記は大航海時代(1450年ごろ〜)に生まれたという説があります。貴族などから出資をつのり、装備や食料を整え、数年後に戻ってきて航海の利益を確定する「経営」を記録するには、それ以前の単式簿記ではなく、複式簿記で記録する必要があったのです。
 複式簿記は500年ほどの歴史を持つことが分かります。このことは第二章の「経営戦略」にも若干の関連がありますので改めて記載します。


 ここまで読んで分かるとおり、僕が考える「会計を学ぶ意義」は「人間が基礎的な学習をし続ける意義」 と「ビジネスマンが会計を学ぶ意義」 に分かれるなかで、随分と1点めの「人間が基礎的な学習をし続ける意義」に偏っています。また社会の仕組みや制度を人が作り変えていくことについては第三章で少しだけ触れたいと思います。第三章を書き終えて、僕がまだ健康だったら第五章あたりで書きたいとも思います。
 では次回は損益計算書の5つの利益を考えてみましょう。

第一章「会計と経営分析」問題文

 「はじめに」で書いたとおり、このブログは僕の子どもに将来教えたいことを書いていきます。
 予定では第一章「会計と経営分析」、第二章「経営戦略」、第三章「全体最適と制約」です。力点は第三章にありますが、それらを教えるにはまず会計や経営戦略の知識を教えないといけません。
 下記に問題を出します。基礎問題の全てについて自分なりの答えを出して下さい。応用問題についても出来るだけ答えを出して下さい。期限は1週間。
 問題の中には正解が1つではないものが含まれます。


【基礎問題】

0.あなたが会計について学ぶことの意義について、簡潔にあなたの意見を述べよ。

1.企業会計の損益計算書(PL)において、5つある利益を上から順に挙げよ。
ヒント:例えば、日本オラクル等の輸入ソフト会社の損益計算書などを参考にしても良い。(筆者は輸入ソフトの会社に勤務しているため)

2.貸借対照表(BS)の3つの大きな構成要素を挙げよ。

3.キャッシュフロー計算書(CF)で、優良安定企業の典型的なパターンを挙げよ。

4.お客様に「儲かるプラン」を提案するとき、儲かるとは何を指しているか。それはなぜか。

5.労働生産性について、営業利益ベースのものと、付加価値ベースのものの違いは何か。また時間あたりの労働生産性(営業利益ベース)を指標として重視する場合、行うべき残業のパターンを挙げよ。


【応用選択問題】

6.無借金経営のメリットとデメリットを挙げよ。

7.自己資本利益率(ROE)の構成要素を3つ挙げて、それぞれの改善策を簡潔に述べよ。
ヒント:デュポンシステムの方式

8.ソフトウェア企業において、検収が完了した受託開発費は、会計処理上はどの項目になるのか。

9.企業において会計の意義は何か。

10.あなたの夢やビジョン(仕事に限らない)を会計の言葉を使って自由に述べよ。


 どうですか。答えは出ましたか。では僕は僕なりの答えを用意しています。簿記などの資格試験では一意の答えが用意されていますが、ここでの問題は一意の答えを暗記するより、問題に対峙したとき「俯瞰し」または「寄り添い」、あるいは「いなす」方法を身につけてもらいたいと考えています。
 では次の記事から問題文を1つ1つ見ていきましょう。次回は会計を学ぶ意義を考えてみましょう。

はじめに

はじめに
 当ブログにようこそ。このブログは僕が自分の子どもが大きくなったら教えたいことを書き留めています。

 僕の子ども「なおくん」は今2才なので、20年後に教えたいことです。
 けれども20年後に教えるには大きく2点の問題があります。


  • A.僕が20年後も生きているか。
  • B.20年後に今、重要だと思うことが相変わらず重要か。

 問題点Aについてはテキストを記述し、PDFファイルで残すことにしました。このブログはそのPDFファイルの派生になります。派生ですが内容は同じです。
 PDFは妻や家族に渡そうと思うので、なるべく立派に見えるようにしています。

 問題点Bについてはブログとして現代に開き、様々な意見に晒して揉むことで普遍性を上げていくこととしました。
 もしかすると、現代で成り立つ議題が20年後には全く成り立たないかもしれませんが、普遍性を上げれば骨子は伝わるのではないかと考えます。

自己紹介
 僕は今、外資系IT企業で地図に関するソフトを自治体や公共分野を中心に販売する仕事に従事しています。狭い業界なので地図ソフトの高垣といえば僕が誰なのか分かった人もいると思いますので、その意味でもなるべく立派に書いていきます。ただし、このブログで述べることは個人の意見であり会社ならびに所属する団体のいかなる意見も代表しておりません。

 僕は20117月に結婚し、その年の4月に名古屋商科大学大学院(NUCB)のMBA(経営学修士)コースに入学しました。20113月は東日本大震災があり日本社会も、個人的にも激動の年でした。僕は自分で言うのもなんですが、運がよく、多くの人に助けられて卒業まで頑張ることが出来ました。同じ年に入学した同期のうち半数は中退しましたので、とても運が良かったのだと思います。新婚でも土日を大学院に通うことを認めてくれた妻、当時の仕事先の社長や仲間、MBAで出会った先輩・同期・後輩、このテキストの原案にあたる社内勉強会に付き合ってくれた同僚に感謝し改めてお礼を申し上げます。

 このブログはMBAで学んだことだけでなく、奈良大学社会学部で学んだ社会学、独学で続けていきたこと、政治の塾「咢堂塾」で学んだこと、何より仕事で学んだことがベースとなっています。第一には自分の子どもに将来役立ったらと思い書いていますが、同じぐらい現代に生きる他の人にもどこかで役にたったらとも思います。

「日本には全体最適の考え方が足りない」
 さて、現時点では三章で一応の完結をする文章を構想しています。第一章は「会計と経営分析」、第二章は「経営戦略」、第三章は「全体最適と制約」です。どれも自分の子どもに教えたいことですが、一番の力点は第三章の「全体最適と制約」にあります。
 これほど重要な考え方が、日本では(世界でも?)全くと言っていいほど教育を受ける機会がありません。その主な理由は3つあると考えています。


  1. 全体最適化についての手法と思想を体系的に学んだ人が少なすぎること
  2. 「全体最適」または「全体」と「最適」について根本的な定義が難しいこと
  3. 全体最適化の手法の危険性を認識しきちんと扱える人が少ないこと


 これら3つの問題点を回避するために「会計と経営分析」「経営戦略」を学ぶ構成になっています。

 もちろん全体最適以外にも子どもに教えたいことはたくさんあります。人に親切にするように、大きな志を持つように。ただ、このブログではまず僕だから教えられることに集中したいと思います。
 三章以後も記述することができるように頑張ります。

2016年7月9日 高垣 勲